債務整理コラム
任意整理で和解できないケースとその対処法
借金が膨れ上がって、このままでは完済が困難だとなった場合、まず考えるのが任意整理です。この方法が選択できるのであれば、裁判所で煩雑な手続きをしなくても済み、処理後のペナルティも受けなくてすみます。そこで、任整理を成功に導くための方法と、もし失敗に終わった場合の対処法について説明をしていきます。
任意整理の流れ
そもそも任意整理とは、債務者が債権者と交渉して利息を下げてもらったり、返済期間を延ばしてもらったりして、借金を支払い可能な状態にしようというものです。交渉や手続きは自分で行うことも可能ですが、不慣れだと大変な手間がかかり長期に及ぶ債権者との交渉も大きなストレスとなります。したがって、普通は弁護士か司法書士に代行を依頼します。一度依頼してしまえばこちらで行うことはほとんどありませんが、自分の借金がどのように処理されているのかを把握するためにも、大まかな流れを知っておくのは大切です。
まず、依頼を受けた弁護士や司法書士は債権者に対して受任通知を送ります。そして、債権者がこれを受け取った瞬間から借金の支払い請求はできなくなります。つまり、交渉が終わるまでは借金の取り立てに悩まされずにすむわけです。次に、借金の詳細について整理をしていきます。その過程で不明な点が出てきた場合は、債権者から取引履歴明細を取り寄せるなどして借金の一部始終を明らかにしていきます。ここで重要なのが、引き直し計算です。
引き直し計算とは、違法に利息を取られていた場合に利息制限法で定められている条件で計算をし直すことです。これによって借金が大幅に減ったり、逆に過払い金が発生したりする可能性もあります。また、それと同時に行うのが債務者の収入と支出の実態調査です。借金の現状と債務者の支払い能力を照らし合わせれば、どのような条件で交渉すればよいかが見えてきます。それを元に和解案を作成して、債権者との交渉に入ります。
任意整理の依頼から債権者との和解までの期間は、数カ月から半年程度です。もちろん、和解したからといって、それですべてが終わるわけではありません。新たな条件の元で再び借金の返済を行い、完済して初めて任意整理は完了します。
和解できないケース
任意整理で和解ができれば借金の負担が大幅に減るので、債務者にとっては大いに助かります。しかし、債権者が任意整理に応じる義務はないので、断られればそれまでです。それでは、現実問題として、和解を拒否されることはあるのでしょうか?
少なくとも債権者が銀行や消費者金融の場合、交渉すら拒絶されるというケースはめったにないでしょう。なぜなら相手に自己破産でもされてしまうと貸したお金が全額消えてしまい、大損になってしまうからです。しかし、そうは言っても、相手の言いなりで和解案をのむと足元を見られてしまうので、債権者側もなるべく良い条件で和解しようとします。例えば、完済までの支払い期間が5年以上になると銀行や消費者金融は、まず首を縦にふりません。債権者側としては返済期間を3年以内に収めたいのです。しかも、最近の消費者金融は、利息制限法違反に伴う過払い金返済問題で、経営状態が悪化してします。昔なら簡単に応じてくれた返済分の利息カットも、現代ではかたくなに拒否する会社が増えてきました。そうなってくると、債務者の返済能力と照らし合わせて考えた場合、和解が困難になってきます。しかも、返済に5年以上かかる場合は、和解するのは難しいという理由で、弁護士や司法書士に依頼を断られるケースすらあるのです。
和解できない時の対処法
任意整理で債権者と和解できない場合、残された選択肢としては個人再生と自己破産があります。
個人再生は、裁判所に申して出て借金を大幅減額してもらう方法です。借金を最大で5分の1まで減額し、それを3年~5年で分割返済します。ただし、住宅ローン以外の借金の総額が5000万円以上ある場合、あるいは、個人再生を行っても借金返済は困難と裁判所が判断した場合は、この手続きを行うことはできません。
一方、自己破産の手続きを行うとすべての借金が帳消しになります。借金整理の最終手段というべき方法ですが、借金を作った理由が単なる浪費やギャンブルの場合は、原則として自己破産は認められません。
いずれにしても、個人再生や自己破産を行うと信用機関のブラックリストや官報に名前が載るなど、今後の生活に悪影響を及ぼしますので、できれば避けたいものです。そのためには、任意整理で債権者と和解をする必要があります。しかし、こちら側に厳しい条件で和解し、その結果返済に行き詰まるようでは意味がありません。和解案で有利な条件を引き出すには、弁護士や行政書士の腕が大きな鍵を握ります。依頼をする際には、過去の実績を確認して事務所を選ぶことが賢明です。できれば、5年以上の返済計画で和解した実績があり、利息制限法違反に伴う過払いについても妥協することなく全額請求を基本としているところがよいでしょう。一方、知り合いから弁護士や司法書士を紹介してもらうのはその腕前が分からないので危険です。必ず、依頼する事務所は実績第一で選ぶようにしてください。