債務整理コラム
ごねることの意義
以前、サラ金業者の「ごね」についてお話をいたしました。業者の「ごね」とはすごいもので、五時間でも六時間でも凄んだり、泣き落としたり、説得したりとよくもまあここまで続くものだと呆れるともなんともつかない気持ちに陥ります。これは電話においても同様で、とにかく極限まで債務者の精神を追い詰めます。
ただし、業者側としても貸金業法による規制によって、一日にかけられる取立ての電話にもある程度の上限が設けられています。大手のサラ金業者では同じ担当者ならば「日に三回」が多いようです。逆に言えば「日に三回以内に取立てができないとまた伸びてしまう」と言うことでもあるため、向こうとしては、一回当たりの交渉時間を引き伸ばして、その間になんとか債権を回収しようとしているとも言えるでしょう。
とは言え、だからと言って「三回超えたら電話をしてこないだろう」などと電話がかかってくると同時にいわゆる「ガチャ切り」をすると、事態は余計に悪化します。実際のところ、このような取立ての基準は様々な解釈ができるように曖昧に設置されています。そのために借金をされているお客さまが自分の都合の良いように法解釈をすると、むしろ向こうのわなにはまる可能性の方が高くなることでしょう。加えて向こうも人間ですから、その神経を逆撫ですることにもつながります。
では、彼らが最も交渉しにくいタイプと言うものはどのような人でしょうか。それは「素直」なタイプだと言えるでしょう。サラ金業者に「素直に対応する」と言うものには少し怖いものがあるかもしれません。しかし風貌は一見こわもての人がいるかもしれませんが、彼らも実態はサラリーマンです。多重債務に陥られたお客さまの現状などについてはSTARSなどの与信管理システムでほぼ完璧に把握されており、返せるかどうかのあてについても取り立てる前からある程度の算段はついています。また、まんがやドラマのように、どこかに連れ去って労働させたりすると言うことも向こうはできません。
そのため、サラ金の方では返済の交渉においてもねちねちとしつこく取り立ててはきても、少なくとも余計な方向に話をこじらせたりはしません。家族の問題だの、道徳の問題だの、近所への評判だのとさまざまな話を持ち出してきますが「貸したお金を返してください」と言うテーマそのものはある意味でぶれないのです。
その点で考えると、お客さまが多重債務に陥っているのであるならば、まずは「素直にそれを伝えること」です。ないものはないのだと正面から交渉した方がお客さま自身も楽ですし、債権者側も「これでは仕方がない」とばかりに諦めざるを得ません。逆に変な理屈をつけてあの手この手でのらりくらりと逃げかわそうとすると、向こうとしても脅したりすごんだり、あらゆる手段を使ってお客さまを追い詰めてくる可能性も生じます。また、ごねられた際に債務者が一番陥りやすいのがいわゆる「逆ギレ」です。これを起こすことはお客さま自身を最も追い詰める結果につながるものだと言えるでしょう。向こうは録音などをしていることも多々あるために、場合によってはその場ではうまくしのげても後々に不利な立場に置かれる可能性も生じてくるのです。
ただし、注意点もあります。「素直」に対応をすると、今度は「泣き落とし」にかかってくることが多いでしょう。この状況に対しても業者の言葉に諾々と従うのではなく、とにかく「お金が無い」ことを前面に押し出すことです。
もちろんこのような事態に陥る前に借金を返せるのであれば、それに越したことはありません。またそもそも借金をしないこと事態が一番の得策でもあります。いずれにせよ、今回お話したことはあくまでもほんの目先の事態への対処法です。返すあてがないのであれば早めに債務整理を行うに越したことはありません。わざわざ精神的な苦痛を味わないながら二日三日返済を先延ばしにしてもらうより、さっさと法的手段を行った方が遥かに手早く人生の再起を図ることができるのです。