債務整理コラム
「債務整理は人生の質を上げるもの」
今回は少し抽象的なお話です。債務整理を行っていると「周囲の人に債務整理をしている事を知られたくない」と言うご相談をたくさん受けます。債務整理をしている事は、さながら映画に出てくるような腕利き探偵を雇うか、さもなければ自分から「債務整理をしているんだ」と周りに話したりしなければ、まず知られる事はありません。
そもそも、借金を周りに知られると言う事がなぜ嫌だと感じるのか。もちろんそこには「会社での評価が落ちる」とか、もしくは「家族から離縁される」とかまたは「人からばかにされる」などと言った理由があるかもしれません。ともあれ、これらを抽象的に総ざらいすればそれは「幸福から遠ざかる」ためであると言えます。
確かに「借金をしている」と言って相手から好印象を持たれる可能性は高いとは言えません。そして悪い印象を人から持たれる可能性があると言うことは、幸福から遠ざかることにほかなりません。しかし、そのために他人の顔色ばかりうかがって借金の返済を滞らせると言うのは少しばかり考えものです。なぜならそれは他人に振り回されているためです。
わかりやすく富士山の登山で考えてみましょう。富士山には毎年たくさんの人が登っていますが、登山で周りと競争する人などほとんどおりません。なぜなら同じ山ではあっても、そこを登る一人ひとりは、性別や年齢、体力が異なります。ましてや一合目から登る人と五合目から登る人ではどちらが偉いなどと言う事はありません。それぞれが登り切った後に充実した顔で山頂に佇むのみなのです。このように登山者にとって富士山は一つの山であると同時に、一人ひとりにとってまったく別の山だと言えるでしょう。
そして借金を返す、もしくはお金を増やすと言う事も本質的には変わらないのではないでしょうか。例えばある人が1000万円の負債を返して、五年後に10億円儲けたとしましょう。しかし、お金持ちになったそのときに1億円の貯金を元から持っていて100億円に増えた人に対して羨ましくてたまらなくなるでしょうか。私はそうは思いません。大企業の経営者でもない限り、個人で使いきれる金額を超えて貯金をしているのであれば、お金の過多で他人を羨む気持ちなどなくなるはずです。
少し話題は変わりますが、世界で一番のお金持ちとは誰でしょうか。諸説は様々ありますが、複数人を挙げてもらうのであれば、その中の一人に「ウォーレン・バフェット」の名前は必ずあがることでしょう。ドルの価格を仮に1ドル100円に例えれば、2011年時点で約5兆円前後の資産を持っていると言われる老人です。 このバフェット氏は「時間さえあれば、誰でも金持ちになる事ができる」と述べています。理屈は単純です。稼ぐお金の方が、出ていくお金よりも１円でも多ければ、後は時間をかけるだけでお金持ちになる事ができるためです。同様にこの人の投資手法は難しくありません。例えば「コカ・コーラ」のように本当に良いと思った会社の株を買って、それをずっと保持しているだけです。コカ・コーラのような長い歴史を持つ会社であれば風評被害に遭う事もあるでしょう。また世界同時株安のような恐慌状態で会社の価格が大きく下落する事もあるでしょう。しかしバフェット氏は他人の顔色などを一切伺うことなく「良いものは良い」として保持し続けました。例え一時的には暴落したとしても、本当に質の良いものは年々その価値を上げます。そのため、安い時に買って、高い時に売る事を繰り返すよりも、バフェット氏はずっと高い価値を持つ事ができたのです。また結果、彼は世界一のお金持ちになりました。このようにお金持ちの考えと言うものはとてもシンプルなのです。
振り返ってみて私たちはどうでしょう。右顧左眄を繰り返し、ろくに会いもしない他人を一時的に笑顔にするためにお金を使っている事が多いのではないでしょうか。ましてやそのために散財をしたり、借金をしたりする事などすらあるのではないでしょうか。これは質の良い行動と言えないはずです。
先の山登りに例えると、債務整理とは登山者を救助したり、またサポートしたりするためのサービスのようなものです。道に迷ってしまったのであれば、山頂までの正しい道筋を教えますし、また仮に崖から落ちて身動きがとれないと言うのであればヘリコプターで山の麓の病院まで連れて行ってそこで療養させる事ができます。元気が出たのであればまた登山に赴けば良いのです。
しかし、せっかく正しい道まで案内したり、また怪我から復帰したにもかかわらず、中には再び登山に赴いた後に、同じような行動を繰り返してしまう人がおられるのは誠に残念です。なぜならこれは、債務整理を行った方が、その人の人生の中でずっと同じ場所をぐるぐると回り続けている事にほかならないためです。
債務整理とは債務者の質をマイナスからゼロに戻す事です。それはけして難しくありません。そしてゼロになったのであれば、今度は自力でプラスに持って行く事も実はまったく難しくないのです。ですので、債務整理を行った後は、今度は自分の質を上げる事に専念しましょう。心構えを正しくし、後は焦らず慌てず時間をかければ、人は誰でもお金持ちになれるのです。
