債務整理コラム
借金から主導権を取り返す
いかなる者であれ、人は自分の人生に対して義務と責任を負っています。これは言い換えれば自分の人生の経営者であると言うことを意味しています。例えアルバイトや主婦・公務員であってもそれは同じ。サラリーマンであるならば、会社の資金繰りが逼迫し、先行きが不透明になってきた折には「なんとかなるさ」とばかりに状況を放置せず、自分の身の振り方を考えないことにはやがて生活もままならなくなってしまいます。
借金が増え始めるのに比例して人は近視眼的になってゆきます。返済できない借金を思ってごはんが喉を通らなくなったり、夜も眠れなくなったり、仕事が手につかなくなったりしてきます。三年先の見通しどころか、今月をどうやりくりするかで精一杯になってきてしまうのです。ことにヤミ金などに恫喝まがいの取り立てを受けると、なんとかその場を切り抜けるだけに意識が収斂してきてしまうことでしょう。
これは自分の人生を経営する者としては大きな問題です。官僚や政治家・大企業の経営者など、多くの人々に影響を与える業務に携わる人達は、目先の些細な事柄は部下たちに任せ、自身は百年先の舵取りに意識を向かわせます。これはいかなる窮地に陥っても変わることはありません。ひるがえって借金が嵩んで目先の事柄にのみ意識が向いている人に焦点を当ててみましょう。目先の数日・数時間をやりくりするために必死になっていると言うことは、今後数年・数十年と自分の人生の舵取りをするのにふさわしい態度であるとは言えません。経営で考えるのであれば、末端社員であると言うような位置づけになってしまいます。そして大局が見えないものは訪れた状況に振り回され、同じミスを繰り返します。
人生を経営と例えるのであれば、経営者には経営者にふさわしい考え方が必要です。元・アサヒビールの会長で「アサヒスーパードライ」を世に送り出した中條高徳氏と言う方がおられます。この方は元々軍人であったため、軍隊の言葉を用いて経営者の人間性をこのように喩えています。
『指揮官は(中略)常時熾烈なる責任観念、及び、強固なる意志を以てその職責を遂行すると共に、高邁なる徳性を備え、部下と苦楽を倶にし、率先躬行、軍隊の儀表として其の尊信を受け、剣電弾雨の間に立ち、勇猛沈着、部下をして富嶽の重きを感ぜしめざるべからず』
危機的な状況になればなるほど経営者はその人間性を問われるとも言えるでしょう。ましてや自分個人においておや、です。厳しい状況になるほどに独り身を慎み、毅然たる振る舞いで将来への成功をしっかりと思い描くべきなのです。このときに求められるものが主体性。借金取りのように債務者の将来を考えず、奪えるだけ奪ってゆく相手に意識を向かわせたりせず、自分の将来的なビジョンに向けて主導権を持って考えることが求められます。返済できるのであればこつこつと働いて返すのも良し。その見通しが立たないのであれば、債務整理で状況を劇的に改善してゆくも良しなのです。
繰り返しますが、借金取りは債務者の将来の成功など一切考えません。彼らの言葉に惑わされてしまうと悲劇的な結末へとたどり着く可能性が増えてしまいます。逆に言えば例えサラリーマンであれ、主婦であれ、アルバイトであれ、自分で自分の人生の主導権をしっかりと握ることができれば、必ず返済への道は拓けます。そして債務整理は絶望的な状況に大きな打開策を開くことができる一つの手法なのです。
借金の額が膨らんだときに自力で返済をしてゆくと言うのは孤独との戦いです。それそのものが一概に悪いとは言えず、また学べることも多々あることでしょう。そのため、仮に債務整理へと着手をせず、自力返済と言う手段を選んだとしても「いざとなったら債務整理を」と頭の中に入れておくだけで、歩んでゆける方向性がまったく異なるものへと変わるはずです。