債務整理コラム
幻の選択にだまされない
人生は選択の連続です。 そう言われて素直に「はい」と頷く人は謙虚な努力家。そうでないと思う方はインスピレーションや人生経験に富んだ方です。
返済を滞納すると取り立ての電話が来ます。応対に出たのであれば、借金取りは「返済期日に振込がされていないようですが」と口火を切るはずです。このとき、事前に心の準備ができていないと大抵の方は以下の3つのパターンのどれかに陥ってしまいます。
- 返事ができずに黙ってしまう
- 「すみません」と謝ってしまう
- 何がしかの理由をつけて言い訳する
借金取りから連絡を受けた方は、必ずこのうちのいずれかに該当するはずです。そしていずれのパターンであっても借金取りは相応の対応方法を知っています。ただ、それらの対応は借金取り個々人の経験によって脅したり、なだめたり、懇々と諭したりと千差万別です。
例えばこのようなことを借金取りが言ってきたとしましょう。
「それで? 結局あなたは返済する気があるの? ないの?」
もし「ある」と答えたのであれば相手は即座に言質を取って「いつまでに、いくら」と言う話題へと話は進展してゆきます。もし「ない」と答えたのであれば、また話は巻き戻って脅されたり、懇々と諭されたりが続きます。債務者が根負けするまで、それは何時間でも繰り返されることでしょう。さながらゲームの「ドラゴンクエスト」で王様からの頼みに「いいえ」と答えたように、話題が何度もループするのです。
借金取りは取り立ての際、債務者に様々な選択肢を投げかけてきます。しかしながらその本質は一切ぶれておりません。例えば債務者が「返済のお金は用意したんだけど、実はどうしても欲しいコンサートチケットに使ってしまって、その歌手は・・・」などと話がぶれそうになると、即座に「そんなことはどうでもいい」と話題を引き戻されることでしょう。彼らは様々な選択肢を投げてきますが、その根っこは「いつまでに返済するのか」の答え以外には存在しないのです。
借金の返済に限らず、ある状況を細分化して相手に質問や提案をすることを「オプション提案」と言います。そしてその質問に想定される答えを考えて次の質問をあらかじめ作っておくことを「シナリオプラン」と言います。法廷で事件をめぐって検事と弁護士が言い争っているところを想定するとなんとなくそのイメージは掴めるはず。実際のところ、借金取りがオプション提案やシナリオプランニングまで学んだ上で債務者を質問責めにしているとは考えにくいですが、彼らは経験からそれを用いているようなのです。
人間は選択肢を与えられると自由な裁量を与えられたかのような気持ちになります。ましてや「はい」か「いいえ」のみで選択を与えられると必ずその中に正しい答えが隠されてしまうような錯覚に陥ってしまうのです。しかし、人生と言うのはもっと曖昧模糊(あいまいもこ)としたものです。「はい」か「いいえ」で正解が選べるのであるならば、家族が急病になった結果、借金を重ねざるを得なかったとなどと言う人はこの世に一人もいないはずです。
借金と言う問題に対して正しい回答と言うものは存在しません。しかしながらそこで目指す目的と言うものは決まっています。あらゆる状況・事象を想定し、最も借金の減る方法を選びとること。そう考えると極限までお金を搾り取ろうとする借金取りの提案のどれかに債務者にとって都合の良い回答が隠されているはずがないのです。
そこまで考えてみると返済を滞納した後、督促の電話が来た際に債務者が選んでしまうパターンと言うのはどれも間違っていると気づかねばなりません。もっと良い回答は他にあるはずです。そして、無限にあるだろう選択肢の中で良い回答を一つ選べと言われるのであればそれは「債務整理を委任したので、後はそちらと交渉してください」なのです。なぜなら、そのために借金問題のプロフェッショナルがいるのですから。