債務整理コラム

ハゲタカの喧伝その1

日々新しい流行が生まれています。今の季節で言えば春物の洋服や受験生向けのホテルの手配や開運グッズ、スポーツならばスノーボードなどが挙げられるでしょう。遠からず廃れそうな言葉には「お一人さま」などと言う流行があります。これに合わせて一人用のカラオケやレストランなどもオープンしているようです。

以前、ある方が当所を訪問されました。この方はAさんと言う人の連帯保証人として百万単位の借金を負わせられるかもしれないと言うことで、気が気ではなかったようです。その理由はマスメディアによるものでした。

Aさんは個人商店を開いており、扱っているものは例えばスーパーマンやスパイダーマンのフィギュアのようないわゆるアメコミグッズのお店でした。このようなマニア層と言うものはいつの時代もあまり変わらないらしく、細く長く常に一定のお客さんが訪れるかたちだったようです。ところがある日、テレビ局からの取材でこのお店が紹介されることになりました。テレビ局側としては町の紹介の中でいわゆるイロモノを扱っているこのお店にスポットを当て、視聴者の好奇心を煽りたかったとのこと。このため、事前の打ち合わせでテレビ局側は「普通のアメコミグッズだけではなく、このお店ならではの珍しい逸品を出してください」と伝えてきたのです。

困ってしまったのはAさん。世間一般の風潮で言えば珍しいアメコミグッズのお店であるとは言え、マニア層から見ればそこで扱っているものはありきたりと言われても仕方がないものが多かったらしく、店舗にはさほど目立つ品はありませんでした。そこでAさんとしてはロケが始まる前日まであちらこちらを飛び回ってはみたものの、ろくな品物を見つけることができず、とうとうロケの当日になってしまったとのです。

結局Aさんは「ええい、ままよ」とばかりに、お店の中でも一番売れずに在庫を抱えていた商品をロケの中で紹介しました。その商品と言うものがどういうものかは私も詳しく伺ってはいないのですが、いわゆるB級ホラー映画に関連した玩具だったようです。Aさんとしてはきっと内心で「こんなゴミでもいくらでも売れればいいや」と言った気持ちだったのでしょう。ところがテレビの力と言うものはすごいものです。「ここでしか買えない珍しい玩具」として、このB級ホラー玩具が番組で紹介されるや否や、ひっきりなしに店に電話がかかってきました。この玩具がまだ残っているかどうかとの確認がお客さんから殺到したためです。

Aさんはテレビの喧伝力に驚くと同時に、この玩具には実は高い価値があるのではと思うようになりました。元々ゴミ同然の在庫として抱えていた商品ですから、売り切れるまでは3日とかかりません。そのため、Aさんはすぐに国外の流通業者に連絡を取り、借金をして玩具の取り寄せをしたのです。

ところが、玩具が届いた頃には既にブームは去った後。テレビの力と言うものは瞬きをするほどの短期間だけは爆発的な人気を出しますが、その後はまるで潮が引くかのように元の状態へと戻ってしまうのです。この結果、Aさんは不気味な玩具を山ほど抱え、引き換えに借金ばかりが残る有様となってしまったのです。

幸い連帯保証人の方からお話をお伺いした限り、借金を少しずつ返済していけば何とか事業は継続できそうでした。

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