債務整理コラム
じゃがいもの芽を取る前に
借金はじゃがいもの芽のようなものです。何の役にも立たないばかりか、わたしたちの人生の至るところから芽を萌し、わたしたちの生活から資産を奪ってしまいます。
当然のことですが、わたしたちの生活はお金によって成り立っています。お金の問題を切り離して生活を考えることはできません。これは例えお坊さんであろうが、ホームレスであろうが同じことです。わたしたちの生活の主軸はお金なのです。
さて、生活を成立させる上でお金の他にもう一つ目を当てなければならないものがあります。それは家族を中心とした人間関係です。人間関係は自分と言うものを構成する大きな要素の一つ。会社でのもめごとや近所付き合いのトラブルなどが生じると頭が痛くなる原因もここにあります。この人間関係にお金が絡んでくると、問題は十重二十重に輪をかけて大きくなってゆきます。
例えばAさんと言う主婦の方がいたとします。Aさんの旦那さんはギャンブルやキャバクラなどの遊興費で借金を繰り返し、それが原因でAさんと別居となってしまいました。Aさんは旦那さんの借金を返すためにパートに出て、毎月少しずつ返済をしてゆきます。そうして数年かけて完済の流れとなり、ほっと胸をなでおろしたその矢先、別居していたはずの旦那さんが戻ってきて再びお金の無心を始めたのです。Aさんとしては堪忍袋の尾が切れます。激しい言い争いの後、二人は離婚となりますが、Aさんの旦那さんから取れるお金などあるはずもありません。結局、Aさんは引っ越すための資金もままならず、今度は自分名義で引越しのための借金をし、月々の返済にあてると言うかたちとなってしまったのです。
Aさんのパターンならばまだ良い方です。少なくとも引越しのための借金を返すことができれば今後の生活再建のめどが立つためです。しかし、この不景気の時代、例えば借金をして引越しをしたとしても、今度は勤め先が倒産したとしたらどうなるでしょう。リストラなどは今や珍しくない時代です。入るはずの収入が入らなくなってしまった場合、例えば先のAさんであれば、今度は借金を重ねてでも今日明日の生活を成立させねばと言う思いに陥ってしまうはずです。この小さなシフトチェンジが多重債務への入り口となってしまうのです。
また、Aさんのように自分の借金ならともかくも、旦那さんの遊興費の返済をすることなどまっぴらだと言う人もたくさんいるはずです。この場合、例えば旦那さんの借金の返済を始めてしばらくした頃、次第にストレスが溜まってきてしまい、自分も借金をしてショッピングに興じたり、また最初の一二回だけ取り立てに応じて返済はしたものの、途中で返済を放置して自分も家を棄てて出ていってしまったりと言う人も山ほどいるはずです。このような人もやはり手持ちのお金がないため、一年も経たないうちに借金漬けとなる可能性が非常に高いでしょう。
いずれにしても、借金をするからには相応の理由があります。とくに人間関係が絡んだ借金の場合、借金そのものよりも借金を生み出す大本となる人が近くに存在するはずです。先のAさんで言えば、これは間違いなく旦那さんです。いかに愛情があったとしても、人は一度その身に染み付いた悪癖はそう簡単には抜けません。ですので、人間関係において金銭的な問題が生じてきた場合、まずはその人間との関係をきっちりと清算しなければなりません。一度精算したところで、もしその後、本人が自分の悪癖を完璧に抜くことができれば、それから改めてやりなおすことができるはずです。逆に関係を精算しても尚、相手が相変わらずこちらに甘えてきたり、責任転嫁をしてきたりするような場合であれば、これは事前に二人の関係を白紙に戻してよかったと思えるはずです。
このコラムでは気軽に借金と言っていますが、いざ借金をするとまるで肩に大きなおもりを載せられたような重厚感に苛まれます。他人から見れば「債務整理をすれば済むのに」と明確にアドバイスできることであっても、本人にとってはストレスとパニックで頭の中がいっぱいになってしまい、なかなか「じゃあ債務整理をしよう」と言うストレートな流れには行き着きません。ですので、お金の問題が生じた際、資産と言うじゃがいもの至るところから借金の芽が吹き出す前に、まずはその根っこを見据えることを心がけましょう。 それにより、はじめて自分の資産状況、また債務状況を冷静に眺めることができるようになるはずです。