債務整理コラム

「バカの壁」を超えて借金を減らす

一昔前に大ベストセラーになった養老孟司氏の「バカの壁」と言う本があります。バカの壁とは端的に言えば、その人が考えるのを止めてしまう境界線のことを示しています。借金問題で苦しんでいる人にとって、お金と言うものは生きるか死ぬかと言えるほどの大切なもの。しかし、毎月の出費を考えている際、そこにバカの壁は存在していないでしょうか?

人にはそれぞれ価値観の違いがあります。ある人にとっては一万円の借金と言うものが大したものではなくても、別の人にとってそれは「とんでもない大金」と思われている可能性もあります。また地方の海辺で生活している人にとって毎日お魚を食べることは当たり前のことです。でも、都会で生活している人にとってそれは意外なほどぜいたくな生活なのです。この価値観の違いに気づくことが、出費を減らすためには意外に大事なのです。

その代表例が車。地方だと「車は必須」と言う意識があります。これは山間部から買い物に出かけたりするため、どうしても手放せない生活必需品と言った意味合いも含まれています。しかし、地方においても今やインフラは徹底して整備され、もはや「インフラは無駄遣い」とまで国民に思われている節があります。またバリアフリーのためにバス運行などもきちんと行われているのですから、突き詰めてしまえば自動車は必須かと言えば必ずしもそうとは言い切れないのです。

かたや都会に住む人の場合、今や車を持つことにほとんど意味はありません。単なる金食い虫として見られている程度のもの。一昔前ならば、都会でも車はステータスを表すものとして扱われていましたが、人と人とのつながりが極端に希薄になった都会において、誰かに何かを見せびらかす意味すらほとんど消え失せているのが現状です。

では、なぜここまで自動車が不要かと述べているのか。それは自動車を使うことを止めれば年に50万円程度は出費を抑えることができるためです。債務整理においては「50万円の借金がどうしても返済できません」と言う人だって珍しくはありません。それを考えてみたら、自動車を手放しさえしてしまえば、無理に債務整理に頼る必要だってなくなるとも言えます。それどこか、次の年からは50万円ずつ貯金だってできてしまうかもしれないのです。

逆に支払った方が良いものもあります。一例を挙げてみましょう。東海地方のある県では結婚式にお金を使います。そこでは、日常生活が他県よりもずっと質素です。これは江戸時代の彼らの慣習からの名残と言えるものですが、そのかわり、結婚式だけは人生の晴れ舞台としてびっくりするほど豪華。もちろん結納金なども相応に弾むため、他県の人が婿入りするのであれば、思いがけずお金に苦労することになってしまうはず。しかしながらその県の人にとってそれは「当たり前」であり、親戚一同を併せて今後一生の付き合いになるのですから、この金額をケチるのはあまり得策とは言えないでしょう。

同様に東北のある地方などはお葬式において、親戚や近隣の住民たちがかなりのお金を出してくれます。これは「いずれは自分も迷惑をかけるのだから」と言う意識のあらわれ。相互扶助の意識によって助け合っているのですから、そのような暗黙の了解を知らずに田舎への憧れだけで都会から引っ越すと思いがけない出費に苦労させられてしまうかもしれません。「えー、知らない人だし、そんなお金払いません」と言い張るのは自由ですが、狭いムラ社会で暮らすことのリスクを考えると、支払った方が得策なはず。なぜならこれも地方の住民にとっては当然の前提だからです。

これらはいずれも集団単位での「バカの壁」。しかし個人間においても、当然の前提としている出費は沢山あります。例えば男同士の「付き合い酒」だの「付き合いゴルフ」だのはその好例。お金がないのに見栄ばかり張っても、いずれは必ず破綻してしまうのです。そのときに恥をかくくらいなら思い切って止めてしまうほうがずっと得策。なぜなら「男として付き合いゴルフを止めるのは恥ずかしい」などと思うかもしれませんが、そんなことをやらない人の方が世の中には圧倒的多数なのです。

女の人もそうです。特に女の人の方が外見に気を使う分だけ、知り合いとの見栄の張り合いになると途方無くお金がかかってしまいます。出費に拍車がかかってしまうが最後、クレジットカードのツケでエステに出向いたり、高級レストランで友人たちとディナーをしたりなど、その額は増すばかりとなることでしょう。しかし、少し落ち着いてみましょう。そんなところに拘わらずに生きている人の方がやはり圧倒的多数なのです。そう考えてみれば、思い切って付き合いを止めてしまうのもひとつの手段。

自分の理解している範疇の外に、思いがけず節約できるものはまだまだあります。例えばタバコ代・酒代・付き合い代・デート代・服飾代・携帯代など、なぜか当然のものとして毎月の生活費に計上してはいないでしょうか? ここで考えることを止めてしまってはいけません。地方に行けば食費・家賃・水道光熱費は圧倒的に安く済みます。携帯がなくて生活している人だって世の中には履いて捨てるほどいます。

自分の当然の前提を疑って考えること。それによって借金の返済は今よりも大分楽になるはずです。

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