債務整理コラム

借金問題で最も恐ろしいこと

人間は恒温動物です。恒温動物とは体温を常に一定に保っている動物のこと。恒温動物は気温が高ければ発汗などで体温を下げ、逆に気温が低ければ身体の毛穴を閉じて産熱を促し、体温を上げるようにします。これにより、人間は一定の体温を維持できているわけです。

体温を「いつもどおり」に維持するこの機能を恒常性と呼びますが、実は恒常性は借金問題に関しても大きな影響を与えます。例えば普段借金をしない人が、たまたま出先でどうしても一万円ほど入り用になり、キャッシングをしたとしましょう。このような人は自分が借金を負ったと言うことが気持ち悪くてなりません。「いつもどおり」の自分と違うためです。だからこの借金をした人は出先から戻るが早いか、すぐに銀行からお金を下ろし、債務を完済してしまうはずです。ところが同じパターンであっても、キャッシングをした後、どうしても返済の都合がつかない状況で返済日が来てしまったため、この返済のためにさらに二社・三社と借入をしたとします。この人が、このような多重債務の生活を初めて数年後。初めはお金を借りたら、即座に返済するのが当然と思っていた人であっても、多重債務の生活に慣れてしまうと、今度は借金を返済するよりも、返済日が迫ればまた新たなサラ金を探し、その融資を返済に充てると言う悪循環の生活の方が当たり前になってしまうのです。

恒常性とはこのように恐ろしいもの。人にはそれぞれ「いつもどおり」の位置と言うものがあります。例えば小学校や中学校のテスト。テストで日頃から九十点代を取っている子どもにとって、七十点は悔しくてたまらないもののはず。このため、一度でも七十点を取ったのであれば、彼はその事実が気持ち悪くてたまりません。だから次は必死になって勉強し、百点を取ってもまだ足りないような状況になるはずです。ところが日頃から二十点・三十点代の点数を取っている子どもにとって、七十点と言うのは嬉しいものであったとしても、やはりどこかいつもと違う感じがします。「たまたま」と言う気分になったり、なんとなく尻の座りが悪い気分になったりするはずです。このため、この子どもは、たまたま七十点を取ったところでそれによって「やればできるんだ!」とはなりません。結局、また次のテストではいつもの二十点・三十点と言った点数に戻ってしまうのです。

子どものテストの点数であれば、放置していても生活に差し支えはありません。しかしこれが借金問題になるとどうでしょう。多重債務の生活が当たり前になってしまうと、頭では「この状況から抜け出ないと」と思っていても、何だかやる気が起きなかったり、債務整理と言う言葉を聞くだけでうんざりした気分になったり、はたまた借金をさらに上乗せしてしまったりしかねません。多重債務であればどうしようもなければ自己破産ができますが、これに加えてヤミ金にまで手を出してしまうともう目も当てられません。サラ金からの督促は当たり前。ヤミ金から借入をしても、取立を受けた家族や勤め先の誰かが借金の肩代わりをしてくれれば万々歳。もしそれがダメでも、自分が痛みを受けるわけではないのだから放置してしまえばいい。そのような考えに心を支配されかねません。より正確に言えば「そんな生活が良いか悪いかで言えば、悪いことはわかりきっている。何とかしなければと言う焦りもある。しかし、どうにも身体が動かない」と言う事態になりかねないのです。

では、この状況を打開する方法はあるのでしょうか。あります。その方法とは「少しだけやる」ことです。多重債務やヤミ金での生活に意識が慣れきってしまった場合、いかに面倒でも放置してしまわずに「少しだけ対処法に取り掛かる」ことが大事。つまり、毎日ほんの少しでも多重債務の処理方法やヤミ金の対策を検索してみたり、またはアルバイト先を探してみたりするのです。ただし、必ずしもその時点で債務整理を依頼しようとか、毎日仕事に従事しなければと思う必要はないのです。そのかわり、ほんの少しでも借金の返済に向けた事柄を必ず毎日行うのです。するとやがて意識がその行為に慣れます。借金問題の対処をしたり、仕事を探したりすることが当たり前になるのです。ここまで来れば後は自分で無理に意識せずとも、身体がスルスルと借金問題の対処を始めたり、日雇いのアルバイトをやってみたりすることでしょう。

繰り返しますが、借金生活からの脱却を願うのであれば、ほんの少しでも構わないので、そのかわり欠かさず毎日、債務整理などについて調べることです。恒常性を変えることができれば、後は意識する必要もなく、生活を上向かせることができるようになるのです。借金問題において最も恐ろしいのは債権回収業者でも、ヤミ金でもなく、自分自身の意識なのだと言うことを肝に銘じておきましょう。

ページの一番上へ