債務整理コラム

破滅の日と終わりなき日1〜破滅とは情報の変遷である〜

ひとつテストをしてみましょう。これから五分間、借金のことを考えないようにしてください。そう言われると大抵の人は借金の事が頭から離れなくなります。しかし本当に稀なケースではありますが「借金のことを……」と言われるやいなやウェブサイトのページを閉じ、本当に借金から顔を背けてしまう人もいないわけではありません。

世の中には借金をするだけした挙句、返せないのではなく、返すつもりがないとはっきりと開き直る人は常に一定数存在します。またそのような人はいかなるデメリットも享受するつもりがないため、債務整理をすることも厭います。要するに借金を放置する人です。

借金の返済をしない人はいずれ必ず破滅します。これはたとえば宿題をしないで夏休みを過ごしたり、勉強をしないで定期テストを迎えたりするのと同じことです。何もしないでのんべんだらりん夏休みを過ごした結果、新学期に周りの生徒が続々と提出物を出し始めたらどうなることでしょう。自分だけが勉強をやっていないとばかりに、パニックになるのはまだまともな人。宿題を提出するつもりがない場合、やがて先生から呼び出しを受けたり、両親に連絡をされたりすることになりかねません。

学校の宿題の放置であれば、放校処分や退学処分と言った破滅的な問題が起こる前に学校の先生が幾度も警告をしてくれます。しかしこと借金問題における破滅はいつ訪れるのかわかりません。なにしろサラ金業者は担任の先生ではありません。しかもサラ金への返済は無視し続けても今日明日、すぐに大きな問題が生じるわけではありません。また取立や督促は法律によって債務者本人にしか請求できません。借金の取立が債務者の両親に及ぶわけでもないのです。しかし、だからこそ取立や督促を一度無視し始めると歯止めが効かなくなり、そうして溜まりに溜まった金利と借金がある日にわかに爆発し、甚大な被害を債務者に及ぼすことになるのです。

では、人生に破壊的な影響を及ぼす破滅の日とは一体どのようなものでしょう。破滅の日と言う響きから連想されるものは、たとえば巨大な隕石が地球に激突する映画の『アルマゲドン』や『ディープインパクト』、はたまた旧約聖書の黙示録のように現実感のない想像に終始しかねません。実際、破滅の日の具体的な現象は千差万別です。

先に学校で宿題を放置するたとえを出しました。結果は放校処分や退学処分です。では借金問題であればそれは何を意味するのでしょう。破滅において債務者に共通するものとして、顔を背け続けてきた借金問題がにわかに荒れ狂うそのときとは、債務者が最も大切に思っているものが奪われる日であると言い切れます。このとき債務者は、これまで当たり前のように享受してきたものがいかに大切だったかに気付かされることになるでしょう。なにせ今まで築いてきたすべてが瓦解するのです。ヤミ金業者に左右の腕をがっちりと抑えこまれて山奥の飯場に連れていかれるかもしれません。取立屋の「善意のはからい」によって配偶者や恋人が風俗店で働くことになるかもしれません。麻薬の密売などを手伝わされ、ある日にわかに警察に手錠をかけられるかもしれません。家族が借金によってバラバラになったと言うのは古今枚挙にいとまがない話です。

いずれにせよ、借金を放置した挙句に訪れる破滅とは、人生で二度と取り返しのつかないものを喪失する日です。それがお金なのか、家族なのか、債務者自身の人格なのかはそのときにならないとわかりません。そのときになって大慌てで自己破産の手続きをしても時すでに遅しです。確かに自己破産の手続きをすれば、サラ金業者に対するお金の借りはチャラにできます。これは借金が100万円であろうが、サラ金業者10社から一億円の債務をしていようが同じことです。しかし、問題はお金ではないのです。債務者への周囲からの信用がすべて失われてしまうことなのです。

想像してみてください。昨日まで愛くるしい笑顔を振りまいていた伴侶や恋人が憎悪をむき出しにして自分に掴みかかってくる姿を。刎頚の友と呼べるような気の置けない大切な親友が、自分をにらみすえながら路上に唾を吐いて立ち去る姿を。マンションやアパートの大家も近隣の人々もすべてがこちらを敵視してきます。なぜか。それは債務者がありとあらゆる信用を失ったからなのです。

繰り返します。債務整理は早めに行いましょう。すぐに借金の整理をするつもりがなくとも相談をしてみるだけでだいぶ違います。問題から顔を背けずに済むためです。逆に借金を返すつもりもなく、ただひたすらに借金を放置することは人生の破滅を招きます。この破滅は債務者本人の身体的な破滅につながることもありますが、多くは債務者にとって最も大切なものを喪失する日となります。その大切なものとは債務者を構成する「情報」です。愛しい伴侶が冷酷な「他人」へと切り替わり、生涯の友が目も合わせられないほどの憤怒を帯びた「敵」へと変わる。このように自分を取り巻く情報が一斉に切り替わるその瞬間、債務者は自分の人生が破滅したことを確信せざるを得なくなるでしょう

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