債務整理コラム
その借金で何をしたのか
如意棒(にょいぼう)と言うものを聞いたことがある人は多いでしょう。有名なまんがの「ドラゴンボール」で主人公の孫悟空が背負っていた棒であり、西遊記の孫悟空が持っていた自在に長さを調節できる棒のことです。如意とは思うがままと言う意味です。
人生とはそもそもが「不如意」なものです。つまり、自分の思った通りには行きません。
身体が不自由な人のように、世の中には生まれながらにして不如意な人がいます。身長の高低だってそうでしょう。知能指数の高さや生まれた環境・国・肌の色もそうです。しかし、それら限られた環境の中でも成功する人もいれば失敗する人もいます。その差はどこで生まれるのでしょうか。
過去のコラムでも述べましたが、サラ金業者の間でまことしやかにささやかれている噂があります。それは「借金で行ったギャンブルは必ず失敗する」と言うもの。これは借金の整理をしている我々の目から見てもあながち間違いとは言えません。もちろん確率の問題ですから、ときには大当たりをする人もいるでしょうが、そう言う人であっても長期的にはやはり大失敗は免れないようです。
なぜ、サラ金から借りたお金でパチンコや競馬をすると失敗するのか。それはひとえに債務者のリスクマネジメントがしっかりとできていないためです。ギャンブル好きな人と言うものはお金持ちになればなるほどその割合が減ってきます。なぜかと言えば、彼らはギャンブルが儲からないことを知っているためです。
千円の品物を千百円で売れば百円の儲けです。たった百円でも、その売買を一万回繰り返せば堅実に百万円を稼ぎ出せます。成功率は100%です。一方でギャンブルは成功率(正確に言えば期待値と言います)が80%以下です。つまり、10回やれば2回は失敗すると言うことです。もちろん確率論ですから多少のばらつきはありますが、1000回もギャンブルをすれば、概ね成功率は80%以下に落ち着くことでしょう。
たとえ小さな成功でも、それを積み重ねて遥かな高みにまで行く人もいれば、大きな見返りを目的に10回のうち2回も3回も失敗することに大金をつぎ込み続ける人もいます。これが成功者と失敗者の分かれ目です。
借金でギャンブルをすると負けると言うことも本質的には同じことです。小さくとも堅実な成功を積み重ねるのではなく、借金の金利や返済のことを考えて成功率が低い大博打に手を出してしまいがちだから失敗するのです。
最初に申し上げましたが、人生はそもそもが不如意なものです。世の中には、理不尽な理由で他人から借金を押し付けられたり、家族が病気にかかったりして借金を負う人も少なくありません。気休めを言うわけではありませんが、そのようなやむにやまれぬ理由で負った借金で、ついに返済が行き詰まり、債務整理をした人はその後、大抵がすぐに人生を再建させ、今度は成功者への道のりを歩み始めます。彼らは善人である上に、今度は人生の不如意を学び、少しでも危ない橋をわたることを躊躇するためです。リスクをコントロールしつつ、自分の手の届く範囲内で大切な人々に喜びを振りまくのです。最も幸せな人生を送れる道のりであることは間違いありません。
もちろん弁護士・司法書士だって別に冷血動物ではありません。一生懸命がんばって失敗した人や、理不尽な理由で借金を負った人であれば、心から心配して、その後の人生を応援したくなります。
かたやパチンコや競馬で行き詰った人は、債務整理にあたると同時にしっかりと自分の性根をすげ替えない限り、同じ問題を繰り返しがちです。これもこれで別の意味で心配なものです。具体的に言えばこのようなタイプの人は「もうギャンブルはしない」と心に誓っても、今度はキャバレーの女の子に「もしかしたら口説き落とせるかも」と言った理由で大金をつぎ込んでしまう可能性が否定できません。もちろん彼女たちだって商売です。ましてや借金でキャバレーに入り浸っている人など、彼女たちはすぐに見ぬいてしまいます。残るのは借金の山だけ。また同じことの繰り返しです。
自分の借金の理由をよく考えてみましょう。自分のことばかりではありませんか? 大切な家族や友人のことを思っていますか?
自分が負った借金は何のためなのか。債務整理で借金を消すと同時に、その理由を洗いなおすことはとても大切です。借金問題の解決以降、今のままの足取りで今まで以上にがんばれば良いのか、それとも過去の自分を反省し、正しい道のりへと方向修正すべきなのか。その点を突き詰めて見つめてみることはとても大切なことだと思います。