債務整理コラム
「影響の輪」から借金問題を見る
世の中には「口だけ」の人が少なくありません。市井に住まう我々はもとより、誰もが知っている芸能人・有名人・政治家などにも「口だけ」の人は多数います。むしろそちらの世界の方が多いかもしれません。
「口だけ」の人とは要するに「やるやる言いながら、何の実行もしない、できない人」のことです。政治家の中には本当はやりたいにも関わらず、いざ政策となった時点で周囲とのしがらみや機密事項によってどうしても実行ができず、忸怩たる思いをしている人もいるかもしれません。逆に「票が集まれば後は知らない」とばかりに、まるで何もしない人もいます。
どちらも「口だけじゃないか」とそしられることになりますが、よくよく対象の言動に気をつけると「やろうとしたけれど、どうしてもできない」人と「最初からやる気のない人」とではまるで違います。それらはすぐには差が出ないかもしれませんが、岩間に水が染みるがごとく、歳月を経るほどにじわじわと開きが出てくることになります。この開きとは即ち信頼の差であり、芸能人であればそれは人気に、政治家であればそれは票に、確実な影響を及ぼすことになるでしょう。
翻ってみて私たちはどうでしょうか。やるやると言っておきながら、これらをきちんと実行したり、責任ある結果を出せなかったりと言う事態に陥ってはいないでしょうか。
ナポレオン・ヒルに続く成功哲学の名著として、世界で2000万部を売り上げた、S・コヴィー著の『7つの習慣』と言う本があります。
この書籍の中に「影響の輪」と呼ばれる項目があります。影響の輪とはその人が現実を動かせる範囲のことです。たとえばAさんと言う人がいたとしましょう。普通のサラリーマンです。Aさんは仕事が終われば居酒屋で一杯お酒をひっかけながら同僚と話をすることが何よりの楽しみです。話の幅は広く、今日のニュース、国際政治や歴史、国内市場の問題、果ては宗教や思想に至るまで話が飛ぶことがあります。
このように知識が豊富なAさんですが、Aさんの語る言葉の範囲とはAさんの関心の範囲。しかし関心がある範囲の中でAさんができることとはどの程度でしょうか。たとえば「民主党政権はあの点が悪かった」と語ったところで、Aさんにそれを糾す力はありません。国内市場の不況にしてもしかり、歴史や国際問題にしてもしかりです。
要するにAさんは「あれが良くない、あれをこうすれば良い」とほろ酔い気分で喚くだけで現実は何も変わらないのです。これはAさんの語る関心の範囲が、Aさんが影響を及ぼせる範囲を大きく逸脱しているためです。
さて、良い気分で家に戻ったAさんですが、帰宅するなり奥さんから「子どもの塾に通う費用が足りないんだけど」と持ちかけられます。しかしAさんは面倒そうな顔で「知らないよ。家のことは任せてるんだから、それくらい何とかしてよ」と言い放つなり、さっさと眠ってしまいました。
奥さんは不満顔。そして数日後、Aさんが家に戻るとそこには子どもも奥さんも姿はなく、テーブルの上にただぽつんと「実家に帰ります」との書き置きだけが残っていました。
これは先の居酒屋とは逆のパターンです。Aさんにとって子どもの問題は、関心がまるでない事柄なので手出しをしませんが、Aさん個人が大きく影響を与えられる範疇でした。Aさんとしては事前に「もう少しお給料の良い会社を探してみる」とか「とりあえずは自分のお小遣いを減らす」とか「生命保険を別の会社に切り替える」と言った提案ができたにも関わらず、これらに良い影響を与えなかったばかりに、Aさんはあまり芳しくない状況に陥ってしまったのです。
私たちも日常生活を送る中で、この「影響の輪」に注意を向ける必要にたびたび駆られます。たとえば朝から晩までパチンコ三昧、車高を下げたボロボロの外車を乗り回し、何もしないにも関わらず「いつかはビッグな人間になるんだ」と豪語しているようなチンピラは少なくありません。そういう人の中にも、一万人に一人くらいは成功者も出るかもしれませんが、残りは大抵、塀の中です。
借金問題もこれと同じ。自分の興味の範囲と、できることの範囲の差に目を向ければ本来であれば常に最善の策を打てるはずです。借金を繰り返しては当たるはずもないパチンコに全額を注ぎ、いつかは大当たりするかもと夢想する人は、自分が影響できる範囲の外にパチンコが存在していることに気づいていません。逆に借金の返済が苦しくなってきていることに目を向けている人は、借金と金利が自分の及ぼせる影響の輪から逸脱しかかっていることにいち早く気づけている人でもあります。このような人は事態が大きくなる前に素早く債務整理に取り掛かることで、すぐに人生の再建に着手できることでしょう。
自分の関心の範疇と、自分が及ぼせる範囲。この双方に目を向けてみると、人生は成功へと一段と近づくことができるはずです。