債務整理コラム

なぜ返せないかを説明しよう 〜貸すと借りるでは価値が違う〜

善意でお金を貸したけれど、いつまでたっても返してくれない。そう悩む人は少なからず存在します。お金は貸す側と借りる側ではその重みが全然違います。貸す方は100円でも1000円でも意外に覚えているものです。他方、借りた方は100円くらいであれば数分後には借りたことすら忘れてしまい、1000円であれば催促を受けてようやく思い出すといった人が多いようです。

貸す側と借りる側に意識の違いがあるのは不思議なことのように思えます。しかしちょっと考えれば、その答えに行き着くことはそう難しくはありません。たとえば一緒にピクニックに出かけ、お弁当の時間になったけれど、あいにくと友人がコップを忘れてしまったとしましょう。あなたはそのとき、たまたまコップを二個持っていました。そのような場合、仲が良い友人であればあなたは自発的に「予備があるからコップを一つ貸してあげる」というかもしれません。食事が終われば友人はそれをあなたに返し、楽しいピクニックは幕を閉じます。

普通、ピクニックで使うコップなどは紙コップか、さもなければプラスチック製のコップがせいぜいでしょう。それらは落としても割れませんし、万一なくしてもあまり気にはならないはずです。しかしそれがマイセンやらウェッジウッドでできたティーカップだったとしたらどうでしょう。ピクニックにはちょっと持って行きたくないですね。もし持っていったとしても「いくら友人でも壊すかもしれないな」と貸すことをためらってしまうかもしれません。

マイセンやウェッジウッドのカップには何万円、ものによっては何十万円もするような価値があります。では、どうしてそのような価値があるものを人に貸すのがイヤなのか。それを考えてみるところに先の答えがあります。

マイセンやウェッジウッドのカップであれ、ロレックスの時計であれ、はたまた現金であれ、財産・資産というものはそれを保有しているあなた自身の価値を示します。紙コップであれば10個で100円くらいの上、使い終われば捨てるものですから、別になくされようが壊されようが何とも思いません。しかし、数万円・数十万円というモノ・カネをなくされてしまえば、その分、貸したあなたの価値がなくなります。

かたや、数万円・数十万円というモノ・カネを借りた側は別に自分の価値が毀損されたりはしません。むしろ「貸してくれる人がいるなんて自分には信用があるんだな」という感情が心のどこかにめばえることでしょう。

お金は空から降ってきたりはしません。資本主義社会においてお金は、その人の時間であり、力であり、能力なのです。極端ないい方をすれば、人が人にお金を貸すということの本質は自分の血肉を一時的に分け与えるようなものであるといえます。つまり、自分のお金を人に貸すというのは、とてもとても苦しいことなのです。これに対してお金を借りる側、血肉を分け与えられる側の人は苦しくはありません。血肉を分け与えられることでより活力を増し、自分の生きる意味や願いを叶えようと邁進することになります。

お金を貸すことは苦しく辛いもの。お金が借りられることは気持ちよく楽しいもの。この違いに貸借の価値の差は生まれます。血肉を取られて苦しいから、お金を貸した側はそれをよく覚えていて、なるべく早めに返して貰いたいと願います。かたや貸した側は血肉を分け与えられた気持ちの良い状態に安住することを願い、いざ返済の段となっても、お金を返して元の状態に戻ることを本能的に忌避するのです。

最初の話に戻りますが、お金を貸したけれど返してもらえないという人はその事実をよく覚えています。逆に借りた側はすぐに忘れます。借りたけれども事情も説明せずに踏み倒してしまう人などは、借りたことすら覚えていません。これはお金を借りることで自分の力を増すという手段が身についてしまっているためです。しかしそれは資本主義社会の本質である、時間・力・能力などで培ったものではないのですから、いずれは元のもくあみとなってしまうことでしょう。ましてやその頃になると周囲からの信用の一切も失ってしまっているのですから、その後の人生はとても苦しいものとなりかねません。

たとえ一円でも、百円でも、お金を借りたら返すことをまずは心がける。当然のことではありますが、人にはそれぞれ事情があります。事故や病気など、たまさかの事情によってどうしてもそれができないというときも少なくないのです。そのようなときには債務整理の専門家に委任し、彼らを通じることで、自分がどうして返済できないのかをきちんと相手に説明しましょう。それはけして悪いことではありません。むしろ、スムーズな人生の再建を行うことでその後、今まで以上に躍進し、そのときあらためて過去に返済できなかった人たちにきちんとお詫びとご恩返しをすれば良いのですから。

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