債務整理コラム
借金の返済をせずに居座りを続けると
サラ金への返済のため、別のサラ金から借りる。これは将棋などでいうところの「詰み」に近い状態です。サラ金の金利は恐ろしいもの。複利で増える返済に充てるお金を用立てするため、さらに複利の借入をしたのであれば、その金利はとてつもない速度で増えてゆきます。本当に驚くべき早さで借金は増えるのです。
このような多重債務を完済できたという人は、今までにほとんどいません。大抵は自己破産をするか、そうでなければ、どうなることやら、そのまま音信不通になってしまうという人ばかりです。
とはいえ、誰も彼もが自己破産か行方不明のどちらかになるわけではありません。それ以外の債務者もまったくいないわけではないのです。
たとえば土地付きの家屋を持っている人。そういう債務者の場合、そこに住んでいることを根拠に立ち退きを拒否することで、抵当の上では既に他人の土地・他人の家屋になっているにも関わらず、その場に居座り続ける人だっていないとは言い切れません。実際にそういう人もいます。また、アパートにしても強制退去を促すことは裁判を通じないとできません。そのため、いくら大家が退去を促しても居留守を使ったり、またいわゆる「逆ギレ」をして喚き散らしたりすることで、さらに周囲から借金を繰り返しながら何とか生活を続けている債務者ももしかしたらいるかもしれないのです。
ただし、実際のところ、これも長くは続かないことでしょう。既に財産を差し押さえられているにも関わらず、上述のような法律の間隙を突いたグレーに近い行動で、立ち退きを拒否している債務者がいたとしましょう。
これがうまくいくと思うでしょうか。もちろん答えは「否」です。たとえば世の中の大多数の人が道路の制限速度をぴったり守ったりしないように、グレーゾーンを用いて生活をしている債務者は、今度はグレーゾーンで仕返しをされてしまいます。
先のたとえのように、借金を重ね、かつ家賃を滞納しながらもアパートに居座り続けている人がいるとしましょう。その人があるとき、ふと買い物をするために近くのコンビニに出かけたとします。アパートの扉をそっと開け、周囲をキョトキョト確認して、廊下に誰もいないことがわかったので、彼は急いで外に出てゆきます。しかしその様子を伺っていた大家さんは、家賃滞納を続けている住人が部屋を出るが早いか、彼の部屋に合鍵を使って入り、ありとあらゆるものを廊下に放り出したあげく、部屋の扉を南京錠で施錠してしまいました。
大家さんの行動はもちろん違法です。しかし、戻ってきた住人があぜんとして大家さんに食ってかかろうにも「まず家賃を払え。話はそれからだ」と始まってしまいます。このように強制退去をさせられた結果、弁護士に訴えて裁判をしたケースもないわけではありません。もちろんその場合、大家さんの方が、分は悪いでしょう。しかし多重債務で携帯電話もおちおち出られない人が、多額の費用や時間を必要とする裁判に出ることはなかなかできないのが実情です。
よしんば裁判をしたところで、もしかしたら裁判所側は大家さんに滞納している家賃と部屋を追い出された慰謝料を相殺するようにいう可能性だって否定できません。このようにグレーな行為を行えば、今度はグレーな行為でやり返される。そう考えると借金を重ねたまま、生活を続けるということは到底お勧めはできません。
今回たとえにしたのは自宅やアパートでの「居座り」ですが、現実において借金が払えないことで「開き直り」をしたり、また「踏み倒し」を繰り返したりするのも根っこの部分では同じことです。そもそもそのような生活を続ければ続けるほど、今後の人生は不安定になり、場合によってはヤミ金地獄に陥ったり、または犯罪に手を染めてしまって逮捕となったりする可能性も十二分にあり得ます。
自己破産はけして怖くはありません。もちろん借金をゼロにすることと引き換えにデメリットがないわけではありません。しかし借金をゼロにする決意を持つということは、人生を刷新してより良いものに変えるという決意と表裏一体なのです。借金まみれで債務の返済のために生活もままならず、朝な夕な取り立てにおびえながら日々を送るよりも、まったくゼロのまっさらな状態から、より輝かしい人生へと一歩踏み出す方がずっと有意義だといえるのではないでしょうか。多重債務で苦しんでいる方は相談をしてみると、思ったよりもずっと楽に人生への新しい道が拓けると当所では確信しています。