債務整理コラム
借金生活から抜けられた人にはワケがある
借金を抱えたのであれば、どんな人であってもこの問題を一刻も早く解決したいと願うはずです。たとえ「借金の返済? そんなこと、もう知らないよ」と居直りを決めてしまった人であっても、もし「ほとんど手間もお金もかからず、すぐに借金がなくなります」といわれたのであれば、一も二もなく飛びつくはず。
借金は誰もがなくしたいもの。借金があって喜ぶ人などこの世には存在しません。しかしそれであっても人それぞれの諸事情によって、嫌々でも付き合わざるを得ないのが、また借金の持つ別の顔でもあるのです。
借金をなくすにあたり、障害となるものは色々あります。たとえばカードの利用やクレジットローン、会社や家族への発覚、職業や役職などへの制限など、挙げたらきりがありません。これらの中で借金生活の一番の障害になるものを強いて挙げるのであれば、これはおそらく「人間関係」になるでしょう。
お金のやり取りは必ずしもビジネスばかりだとは限りません。たとえば友人・ガールフレンドやボーイフレンド・子どもや親など、さまざまな関係が挙げられるはずです。その関係の裏には濃密な感情がつきまといます。
以前、このようなことがありました。
ある零細企業の社員が、債務整理の相談のため、当所を訪れました。ただし、借金問題ではありますが、彼の借金ではありません。会社の借金です。彼はこの会社の社長の娘婿であり、義理の父親は彼をほぼ無給に近い状態で働かせているとのことでした。
たとえ義理の息子とはいえ、一人の人間を無給に近い状態で働かせていることがまず法律違反の可能性があります。しかしながら相談者が打ち明けてきたことは、そこではありませんでした。彼は会社の経営が傾き、火の車の財務状況の中、現社長である彼の義理の父は、彼に会社を譲渡するかたちで彼に会社の借金を負わせようと考えているという話だったのです。
相談者である社員が辣腕の経営能力を持っており、彼自身の采配によって会社の経営が立ち直るのであれば、それは一考するに値するかもしれません。しかし、よくよく話を伺ってみると、現社長は彼に会社の借金を負わせることと引き換えに、彼に社長の肩書は与えるものの、自分は会長へと肩書を変えて相変わらずのワンマン体制を続けるつもりのようでした。
借金だけを他人に負わせ、自分は権力を保持し続ける。このような無体な行動は、常識的に考えてあり得ません。別段、弁護士や司法書士の資格を持っていなくても、ごくごく一般的な考えに則れば、誰もがそうアドバイスするはずです。当然、当所としても「そんなことをしたら会社の連帯保証人として、あなただけがひどい目に遭う可能性があるのでは」と伝えました。
ところがそう伝えるや、彼は突然「でも、自分は結婚しているし」と困り切った顔でつぶやきました。それを聞いて当所は彼の思惑を理解しました。彼の望みは借金の相談ではありません。辛い状況であっても、希望があるよとアドバイスしてもらうことで彼は背中を押してもらいたかったのです。なぜなら、この件の本質とはそもそも、義理の父親という、反発しにくい相手から借金の肩代わりを頼まれたということでした。これを断れば、場合によっては夫婦関係にひびが入る可能性も十分にあります。
しかしながらシビアな視点でみれば、ほぼ無給でこき使われ、あげくに莫大な金額の借金の肩代わりを迫られるというのは常軌を逸した行動であるといわざるを得ません。それであっても家族関係を大事にしたいというのはもちろん彼の自由です。
結局、彼は煮え切らない返事のまま、決断を下せずに相談を終えました。
借金問題においては、往々にして他人から見ればあり得ないほどおかしな事柄を、人間関係によって無理に背負わされているパターンが少なくありません。
このような人間関係が原因となっている借金生活から抜けられた人には、共通するある特徴があります。
人間関係で生じた借金問題を終わらせられる秘訣。それは感情を切り捨てて行動に移ることです。ときにそれは今まで関係のあった人からすると、シビアでドライな態度と映ることでしょう。しかしそれでもやるべきときにはやらねばならないのです。
もちろん人の情をお金で換算することはできません。しかし、あまりにも異常な事態に関わった場合、感情を切り捨てて、機械のように淡々と損失を切り捨てられた人、その人たちだけが、経済的な自由と新しい人生のステージを手に入れることができるのです。
人間関係は複雑なもの。しかし悪意ある事柄については断固としてはねのける。そのような覚悟を持つこともときには必要だといえることでしょう。