債務整理コラム
負け犬になりたくなければ群れないこと
借金の返済で悩んでいる債務者は、自分と同じような境遇の人がどんな考えを持っているのか知りたがります。そうすると必然的に債務超過に陥った人たちの輪ができるものです。輪といっても、これは別にそのような集団が存在するわけではありません。要するに空間さえあれば良いのです。たとえばインターネットの掲示板・フォーラム・SNSのように自分の借金について忌憚なく心情を吐露する場などがこれに該当するでしょう。
債務超過に陥った境遇を述べたところで、顔も知らないネット内の人々が自分を慰めてくれる保証はありません。ただ、他人が「今自分の借金は○○万円。毎月いくらの返済をしている」と述べれば、同じように返済を続けている人も孤独感を癒やすことができます。また債務超過で返済ができない人であれば、同じように「どうしよう……」とつぶやいている人の言葉を目の当たりにするだけでずいぶん気持ちが和らぐようなのです。
こう書くと一見これらの掲示板・SNSなどには効能があるように思えます。しかし事実はまったくの逆。これらはあくまでも自分の孤独感、もしくは辛い境遇を一時的に麻痺させているに過ぎません。借金はあくまでも個人のものであり、歩んでいる道のりは似ているようで実はまったく関係がありません。それにも関わらず、たとえば「私もあなたと同じ返済が苦しい状態。お互いにがんばろうね」などといってしまえば、これは返済の苦悩への気持ちが共有された分、返済する意欲が削がれてしまいます。要するに借金の悪循環に呑まれてしまうのです。
実際、債務整理を行った人から話を聞くと、インターネットの借金返済中の掲示板などを覗いていたというケースが少なからず存在しています。しかし、債務超過で苦悩している人は、借金の返済がもうすぐ終わるという意見にはあまり共感しません。自分とは違うからです。同じように債務整理をしたという話にもあまり興味を抱きません。ただ、今の状態と同じ人だけを探し求めるため、どんどん悪循環に陥ったと聞きます。
これは非常によくない傾向です。新橋の居酒屋で愚痴をこぼしているサラリーマンは共感してくれる同じような同僚を求めています。日雇い労働者は飯場で発泡酒を飲みながら、同じように愚痴をこぼしています。それを繰り返している限り、彼らはそこから抜け出すことができないでしょう。もちろん、そのような場にゆくことのすべてを否定するわけではありません。借金の返済は辛いものです。ときに精神の安定を図るために同じような境遇の人を求めることも必要かもしれません。しかしお金はドライなものです。借金という境遇から本気で抜け出したければ、まずはそのような場に顔を出すことを止めるべき。そこには本当に役に立つ情報は存在していないためです。
インターネットであれ、新橋の居酒屋であれ、場末のスナックであれ、一度そのコミュニティに属するとそこから脱するのは難しくなります。繰り返しますがその傾向はとても危険なもの。出る杭は叩かれ、しかし、出ないでズルズルといると借金はどんどん増えてゆき、やがてそこに顔を出すことすら難しくなるのです。誰が作ったわけでもありませんが、こういうものは一種のワナと捉えるべき。
そもそもコミュニティにおいては動物の社会ですら同じ。弱いものになるほどお互いに群れたがります。逆に強いものほど単独で存在します。他者を必要としないためです。同じレベルの場所には意味がないのです。どうしてもコミュニティから抜けにくいのであれば、まずは一歩高いレベルの人と付き合うことを心がけましょう。借金でいうならば、完済間近まで頑張った人を見習うとか、債務整理の相談をしてみた人に話しを聞いてみる方がずっと有益なのです。