2009年4月の知らなきゃ損する債務整理関連ニュース
2009/04/15年収から「何を買ったか」まで「丸裸」 信用情報どこまで公開?金融庁も悩む
2009年6月をめどに、銀行やクレジットカード、信販会社などが加盟する個人信用情報センターのCICと、消費者金融などの貸金業者などで構成される日本個人情報機構(JIC)が管理している個人信用情報がオンラインで結ばれる。いわゆるブラックリストだけが覗けた状況から、「いつ、どこで、いくらの買い物でクレジットカードを使ったか」といったお客情報(ホワイト情報)まで手に入り、おおよその暮らしぶりも推察できる。情報の精度を下げれば多重債務者を増やすし、高めればプライバシーも丸裸とあって、金融庁は「落としどころ」に頭を痛めている。
きっかけは「コード71」の扱い
多重債務者問題を解決するために段階的に施行されている改正貸金業法の「第3段階」として、09年6月にも個人信用情報の「交流」が始まろうとしている。にもかかわらず、金融庁はいまだ具体的な情報内容について何もアナウンスしていない。どうも金融庁内部で揉めているようなのだ。
そのきっかけはコード番号「71」の登録。個人信用情報にはさまざまなコード番号が付いているが「71」もその一つで、消費者金融や信販会社などに対して過払い利息の返還請求を行った人に付けられている。過払い利息の返還請求によって借金の返済がなくなったり、減ったりした人でも、再び「お金を借りない」とは言い切れない。そのため、JICでは「コード71」を付して与信判断に役立てている。
ところが、このコード番号の情報登録に、過払い利息の返還請求をビジネスにしている弁護士らが金融庁に対し、「コード71があると必要なお金を借りられない人が出てくる」とクレームをつけ、情報の削除を求めた。
たしかに、当初の契約どおりにお金を返済できない可能性のある債務者を識別するために付けられた番号なのだから、貸し手が「コード71」が付いた債務者の審査に慎重になるのは当然だろう。
しかし、削除してしまえば、債務者の正確な情報が与信に反映されなくなる。しかも金融庁は3年前に、この「コード71」の情報登録を容認した経緯がある。それにもかかわらず、一部の弁護士の執拗な申し入れで金融庁の見解がぐらついているのだ。
「ホワイト情報」からは暮らしぶりもわかる
じつは現行でも、全国銀行個人信用情報センター(KSC)とCIC、JICは、「CRIN(クリン)」というシステムで「事故情報」を交換している。銀行やクレジットカード会社、消費者金融などで延滞などの事故があれば情報が回り、他社で借り入れできなくなる仕組みになっている。
それが6月以降は、いわゆるホワイト情報も閲覧できるようになり、さらには現在デイリーで更新している情報がリアルタイムで更新される。そして、こうした情報はそれぞれの個人信用情報センターに加盟している銀行からクレジットカードや信販会社、消費者金融に商工ローン、リース、メーカー、町の小さな貸金業者や商店会に至るまで、消費者ローンを手がけるほとんどの「貸し手」で閲覧できるようになる。
一方、カード保有者は現在クレジットカードだけで3億枚超が発行されていて、国民1人あたり3枚弱を所持している。これにローン専用のカードが加わるのだから、世に出回っているカードは膨大な量になる。それらの個人情報は、たとえばCICに登録されている情報だけでも5億件に上るという。
ある消費者金融の関係者は、「いつ、どこで、いくらの買い物でクレジットカードを使ったかもわかってしまう」と話す。情報からは年収もわかるし、そこからはおおよその暮らしぶりも推察できる。もちろん、「優良顧客」の証であるゴールドカード会員の情報も例外なく流通するのだから、多くの国民のプライバシーが筒抜けだ。
かつて、あるメガバンクのトップが「消費者金融からおカネを借りている人には、住宅ローンは貸さない」と発言して物議を醸したが、それが現実味を帯びてきた。
2009/04/ 9消費者金融借り入れは年収の3分の1 規制導入でヤミ金に走る人が増える?
消費者金融などからの借り入れを年収の3分の1に制限する「総量規制」の導入に、金融庁が逡巡している。グレーゾーン金利の撤廃や貸出金利の上限引き下げと、多重債務者問題の解決に向けて矢継ぎ早に手を打ってきた金融庁だが、こうした施策に過払い利息の返還請求の負担がかさんだ消費者金融業界は赤字決算や廃業を余儀なくされている。急激な「貸し渋り」が起こっていて、「ヤミ金」に流れる利用者が急増しているようだ。雇用の打ち切りや賃金カットが進むなかで、「このまま総量規制を導入すれば貸しはがしが起こり、ヤミ金に走る人が増えるだけ」(金融関係者)と危惧する声も漏れてきた。
消費者金融の赤字がメガバンクを直撃
金融庁によると、2009年2月末時点の貸金業者数は6477社で、08年3月末から1年弱で約3割減少した。消費者金融大手を含む財務省登録業者は08年3月末の580社から101社減って479社に、各都道府県の登録業者は8535社から2537社減って5998社となった。
この数字が示すように、地方の中小零細業者は急減。09年1月からの1か月でも、都道府県登録業者は215社も減っている。
貸出金利の上限の引き下げで融資審査を厳格化。それにより利用者が減っていることや、過払い利息の返還訴訟が相次いだことが、消費者金融など貸金業者の経営を圧迫し廃業に追い込んでいる。
経営悪化は、消費者金融大手も例外ではない。アコム、プロミス、アイフル、武富士の大手4社の貸付残高(単体ベース)は、09年3月末で4兆円の大台を割り込むことがほぼ確実とされている。過払い利息の返還は高止まりしており、「引当金の積み増しなどの対応を迫られる」(消費者金融の関係者)と、収益回復の見通しはみえない。
さらに、消費者金融の経営悪化は銀行グループに波及。たとえば、三菱UFJフィナンシャル・グループの連結子会社であるアコムの赤字が膨らめば、銀行決算の赤字も膨らむことになる。三井住友銀行系のプロミスや、新生銀行グループのシンキやGECF(レイク)なども同様だ。
事態はもはやメガバンクにも波及し、消費者金融業界の話ではすまなくなってきている。
総量規制で増える「貸しはがし」「貸し渋り」
2006年12月に公布された改正貸金業法は、10年6月までに完全施行することになっているが、金融庁は当初「公布日からおおむね3年後」を目標にしており、「総量規制」はいわば、その仕上げにあたる。
日本貸金業協会の調べによると、貸金業者に既存の正常顧客の中に「年収の3分の1」を上回る利用者がどのくらいいるか聞いたところ、貸付残高5000億円超の大手貸金業8社のうち、「25%超?40%が抵触する」との回答が3社、「60%超が抵触する」との回答が4社あった。
一方、利用者側に同じ質問をしたところ、「年収の3分の1を上回って借りている」と答えた利用者が44%いたことがわかった。
総量規制の導入を見据えて、貸金業者の中にはすでに与信の見直し、具体的には利用限度額の引き下げや、新規借り入れの抑制などの措置に動きはじめている。つまり、法律によって「貸しはがし」や「貸し渋り」がはじまっているわけだ。しかも、景気悪化で借り手の給料が増える見込みが少ないことから、今後、いま以上に赤字を増やしたくない消費者金融は利用者の選別の目をさらに厳しくするだろう。
金融庁の多重債務者問題懇談会に出席する、ある委員は、改正貸金業法が景気のよいときにつくられたもので当時と環境が大きく違う点や、「(総量規制が年収の3分の1であることの)根拠がよくわからない」と指摘。また、ある弁護士は「本来、与信判断は各社別々の裁量があるもの。それを年収の3分の1にあわせてしまえば、これは実質的に個人を格付けすることになってしまうし、行き過ぎた管理強化にほかならない」と、導入反対の声がにわかに高まっている。
消費者金融で借りたお金を生活費に充てているケースは少なくなく、「年収の3分の1」に借り入れを制限すると、そうした人が「ヤミ金」で借りることになる。そうなると、法律本来の意味がなくなるばかりか、「ヤミ金」を喜ばせるだけになる。