2009年6月の知らなきゃ損する債務整理関連ニュース
2009/06/25「格付け引き下げ」 アイフルはどこにいくのか
消費者金融大手の一角であるアイフルの長期格付けを、米格付会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスやスタンダード&プアーズ(S&P)が相次いで、2段階引き下げた。「Ba2」、「ダブルB」の格付けは「投機的」の水準で、ジャンク債寸前の扱いだ。消費者金融は、改正貸金業法への対応や過払い利息の返還請求などで収益悪化がとまらない。銀行グループに属するアコムやプロミスとの「格差」が広がり、「アイフルはどうなるのか」とささやかれている。
ダブルBは「投機的」の評価
アイフルの格付けは、ムーディーズが「Baa3」から「Ba2」へと2段階引き下げたのに続いて、S&Pも「トリプルBマイナス」から「ダブルB」に格下げした。
格付けは債券を発行した企業が、元本と利息をきちんと支払えるかどうかの目安となるが、ムーディーズの格付けは最上位の「Aaa」から最下位の「C」まで21段階。アイフルの「Ba2」は上から12番目の水準で、格付けの見通しを「ネガティブ」、投資判断を「投機的」と評価した。
S&Pの「ダブルB」は22段階のうち上から12番目で、「不確実性、脆弱性を有する」という評価だ。ちなみに、S&Pは武富士も「ダブルBプラス」に1段階格下げ、アコムは「トリプルBプラス」、プロミスは「トリプルB」に据え置いた。
いずれにしても、アイフルは大手4社のうち最低の評価となった。
格下げの理由についてS&Pは、アイフルは09年3月期末の連結有利子負債9178億円のうち、1年以内に返済期限を迎える債務が4370億円と大きいこと、また「資金調達の柔軟性が制約される」と指摘している。
格下げは「想定内」資金繰り「心配ない」
格下げの理由になっている資金繰りの悪化について、アイフルは「心配ない」と強気だ。「格下げは想定内だし、資金の調達計画はそれを織り込んでいて、確実なところ(メーンバンク)と話はついている」と断言する。
とはいえ、不安がないわけではない。アイフルを支えてきた、あおぞら銀行は新生銀行と経営統合で交渉中。住友信託銀行も09年3月期決算こそ黒字を確保したものの、十分な支援は期待できない。500億円を設定した銀行融資枠は現在、残り100億円と細い。「資金繰りを支援する銀行団がアイフルと距離を置きはじめている」というウワサもある。
当面の資金繰りは、「手元資金のやり繰りできる」(アイフル)という。同社によると、09年3月末時点の手元資金は、現金1315億円。これに、「貸付金の元金とその利息分の9192億円の入金がある」と説明する。合計1兆507億円。これを貸付金の原資と過払い金の返還、有利子負債の解消に充てるという算段だ。
しかし、入金を見込んでいる9192億円が間違いなく手元に入るとは限らない。景気悪化で資金回収が滞り、不良債権化しそうだからだ。
加えて、過払い金の返還額が増える可能性がある。08年度の過払い金の返還額は大手4社で一番少ない550億円だったが、アイフル自身も「過払い金の返還額は流動的な要素が多く、実際にどのくらいになるかはわからない」と、増加の可能性を認めている。
不良債権が増え、過払い金の返還額が高止まりすれば、監査法人はこの3月期(1634億円)を上回る引当金を求めるはずだ。
それでも、アイフルは「融資審査の厳格化と回収の強化で貸付金を圧縮すれば、資金は手当てできる」と話す。ただ、貸付金の圧縮は顧客離れが進んで収益基盤を悪化させるし、強引な資金回収もできないとあって、資金手当はそう簡単ではない。
2009/06/ 9「個人と個人」融資仲介に熱い視線 外資系金融機関の新規参入も間近
お金を借りたい人と貸したい人を結びつける融資仲介サービスの「ソーシャルレンディング」(P2P融資)に熱い視線が注がれている。P2Pはインターネットを使って、個人に資金などを用立てる短期・少額の融資。日本で唯一P2P融資を手がけるmaneo(マネオ)の利用が増え、新たな市場として外資系金融機関などが注目し、具体的な参入準備を進めているようだ。
融資残高7500万円「まあまあの滑り出し」
2008年10月に開業したmaneo(マネオ)は、インターネット上のソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)を介して、借り手(ボロワー)と貸し手(レンダー)の情報をマッチングさせて、お金を融通する。
P2P融資の基本は「相互扶助」の精神で、ひと昔前の頼母子講や無尽のイメージ。最近は「マイクロファイナンス」ともいわれ、結婚や出産、友人からクルマを買う、ローンの借り換えといった、個人の生活費に近い資金を用立てる金融サービスとして注目されている。
maneoの6月5日現在の融資残高は、7565万円。会員(ID登録者)数は、借り手・貸し手の合計で7966人。広報担当者は「まったくのゼロからのスタートだったことを考えると、まあまあの滑り出しだと思っています」と話している。
借り手の多くは30?40歳代の男性。一方の貸し手も多くが30?40歳代の男性で、一人数万円、多くても50万円程度の融資が中心。「大金持ちがお金を貸して、ひと儲けしようというものではありません」という。
借り入れまでの手順はこうだ。お金を必要とする借り手が、金額や使い道、借入期間、金利をオファー。「オークション」が開かれ、貸し手と借り手とが融資条件について交渉し、まとまれば融資実行となる。
オークションでは、借り手・貸し手の実名や住所、顔写真などは明かされない。応札が多ければ、借り手は一番低い金利を提示した貸し手からお金を借りられる仕組みなので、借り手は交渉時に、貸し手をいかに説得できるかがカギになる。
外資が事業計画書抱えて参入準備に奔走中
おおよその貸出金利の水準は、たとえばローンの借り換えで年5.0?12.0%になっている。その1.5%を手数料としてmaneoが徴収、残りが貸し手の取り分だ。
maneoの場合、借り手と貸し手の個人情報をmaneoが管理。借り入れには年収証明や本人確認など、一般の消費者金融とほとんど変わらない手続きが必要で、さらに個人信用情報機関を通じて多重債務者やその予備軍でないことを確認して貸倒リスクを抑えている。
貸し手にとって、少額で期間数か月から長くて3年の「maneoファンド」に投資して資金運用していると考えれば、低金利の銀行の預金よりもお得。手元の余裕資金が人の役に立って、しかも儲かるという「一石二鳥」だ。
こうしたmaneoの好調ぶりを見て、P2P融資への参入を目論む人が増えている。なかでも、外資系金融機関をリストラされた社員や、退職した社員が事業計画書を抱えて奔走、事業化の算段に躍起だ。
また、あるSNS運営会社は、将来の本格的なP2P事業への進出をにらんで、「貸し手」を対象とした融資契約書作成サービスを仕掛けている。「外資系金融が参入をめざして、わざわざ下調べに来ている」(事情通)との情報もある。
海外では、米国のプロスパーや英国のZopaの成功例もあって、P2P融資は消費者に認知された、新しいお金の借り方として浸透している。日本での認知度の高まりに、さまざまな人の参入意欲に火がついた。「不況で生活費などの小口の借り入れニーズは高まっている」(消費者金融の関係者)背景もあって、第2、第3のmaneoの登場はそう遠くなさそうだ。