2009年11月の知らなきゃ損する債務整理関連ニュース
2009/11/24銀行の「おまとめローン」総量規制「抜け穴」になる?
2010年6月に予定されている改正貸金業法の「総量規制」の導入で、どこからもお金を借りられない多重債務者がますます増えると予測されるなか、消費者金融などの貸金業者が、銀行の「おまとめローン」がこの規制の「抜け穴になるのでは」と危惧している。
複数の貸金業者からの借金を「おまとめローン」に1本化すれば、利用者は返済負担が軽減できるうえ、総量規制が解かれて貸金業者から再度お金を借りられるようになる。このため、「かえって多重債務者を増やす」(大手消費者金融の幹部)と心配する。
借金1本化で金利負担を軽減
複数の消費者金融やクレジットカード会社の借金を1本化して、「完済」を手伝う「おまとめローン」は、テレビCMでおなじみの東京スター銀行や、関西アーバン銀行、オリックス信託銀行などが熱心に取り組んでいる。
東京スター銀行の「おまとめローン」は、利用者が借りたお金を生活費などに使ってしまわないように、銀行が直接、借入先の貸金業者に返済するのが「ミソ」。広報担当者は「利用者は多いと4、5社から借りている。当行ではそれを完済し、返した後の資産形成の計画まで相談に応じている」と、多重債務者の返済支援を目的とした商品であることを強調する。
ホームページやモバイルから申し込みできる利便性の高さもあって、残高は660億円(09年3月末)に上る。
改正貸金業法による「総量規制」は、一人あたりの借入総額を年収の3分の1に抑え、多重債務者をなくすのが狙い。たとえば年収300万円の人が、消費者金融に50万円借りていて、他に2社のクレジットカード会社に30万円ずつのキャッシング枠があった場合は、すでに年収の3分の1を超えているので新たな借り入れができないことになる。
日本貸金業協会の調べでは、現在資金業を利用している人のうち、すでに総量規制に抵触する人は5割に上る。ある貸金業者の関係者は「抵触する人が銀行のおまとめローンに流れている」とみている。
銀行に貸金業法は「適用されない」
総量規制は多重債務者の救済を目的としているが、銀行の住宅ローンや教育ローンなどは対象にならない。カードローンも銀行のものであれば対象外だし、「おまとめローン」も外れている。
金融庁は、「そもそも、貸金業法は消費者金融や商工ローンを対象とした法律なので、銀行には適用されません」と説明する。
現在、東京スター銀行の「おまとめローン」は年収の3分の1を超えて借金がある人でも利用できる。同行は「いまのところ総量規制による駆け込み需要のようなことはない」(広報担当者)というが、「最近は貸金業者も融資審査を厳しくしているので、返済負担を軽くして借り入れ余力を残したいという人は少なくないはず」と、前出の貸金業関係者は実施時期が近づくにつれて利用者が増えると予測する。
金融庁は、「総量規制にかかわらず、貸金業法には過剰貸付の禁止事項があるので、お金が返せないのに貸せば、法令に基づいてきちんと措置します」と貸金業者を牽制する。しかし個人の融資情報は、消費者金融やクレジットカード会社であれば「共有」しているが、現在、銀行が保有する個人情報を貸金業者が閲覧できる仕組みはない。
そのため、銀行の情報を知らない貸金業者が多重債務者やその予備軍に、再びお金を貸してしまう可能性はある。
2009/11/ 9「総量規制」の余波で カードのキャッシングなくなる?
「実施か」「延期か」——。2010年6月までの実施が予定されている改正貸金業法の「総量規制」が揺れているなかで、クレジットカード会社が総量規制の実施をにらんで、収益源の一つであるキャッシングサービスの廃止・縮小に動いている。
「総量規制」は無担保カードローンを利用する場合、利用者一人あたりの借入総額が年収の3分の1を超えないようにする規制。それによって悪質な業者を排除し、かつ多重債務者をなくすのが狙いだ。
しかし、この規制を実施すると、お金を借りたくても借りられない中小・零細企業や個人事業主が増え、お客が結果的に「ヤミ金」に流れるとの指摘がある。利用者の不満もくすぶっていて、こうしたことが総量規制の「延期論」が浮上した背景にある。
ヤミ金の利用拡大を懸念、「延期論」も
2009年11月3日、大塚耕平金融副大臣は2010年6月までに完全施行される改正貸金業法について、「延期も含め見直しの議論をはじめる必要がある」との認識を示した。法律が成立した3年前とは経済状況が大きく変化したため、「予定どおりでいいのか、議論する」と話した。
ところが、その翌4日に亀井静香郵政・金融担当相が「予定どおりの実施」を明言。金融庁も「議論はするようだが、具体的にはこれから」といい、実施するのか延期なのかはわからない。
そうした中で、「総量規制」の実施が半年後に迫り、「準備を進めておかないと実施となった場合、間に合わなくなる」(大手カード会社の幹部)段階にある。
個人信用情報センターとのアクセスのためのシステム投資だけで数10億円が必要というし、法施行後はお客から定期的に年収証明書を提出させるなど、手間がかかるので、低金利で採算ベースに乗らない小口のキャッシングサービスなどは廃止・縮小していく兆しにある。
三井住友カードは10月から、キャッシングのうち、借り入れた翌月に一括返済する制度を廃止した。同社は、「貸金業者の、毎月の返済額を年収の36分の1以内に収める自主規制を遵守したため」と理由を話す。この自主規制は日本貸金業協会が「総量規制」を踏まえて別途定めたルールだ。
キャッシング「一括返済」なくなる
たとえば、30万円を借りた翌月に全額を一括返済にすると、この自主規制に抵触する人が現れる可能性がある。そのため、三井住友カードは一括返済を廃止して、後日お客が自ら行う「繰り上げ返済」で対応できるようにした。
これは他社に先がけたもので、日本貸金業協会に加盟するカード会社は今後同様の対応を迫られることになる。つまり、キャッシングから「一括返済」という選択がなくなるわけだ。
また、すでにトヨタ自動車の金融子会社のトヨタファイナンスやJR東日本のビューカードはカードのキャッシング機能を廃止した。ある大手消費者金融の幹部は、「総量規制が実施されればデフォルト(事故)件数が増えそうなので、キャッシングを止めるところは増えるだろう」とみている。
カード会社はここ数年、キャッシングをショッピングとともに収益の柱に育ててきた。「廃止」となると、収益への影響が大きいため、そう簡単ではない。あるカード会社の関係者は、「トヨタもJRも、もともとショッピングが中心でキャッシングの利用が少なかったから思いきって(廃止)できた」と話している。そのカード会社は「現時点でとくに見直しは考えていない」というが、キャッシングもできなくなるとお金はますます借りにくくなる。