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「迫り来る老後破産」の恐怖

「老後破産」「貧困老後」という文字が週刊誌に躍っている。
『「老後破産」はこう防げ! 住宅ローン編 返済が月収の2割超、90年代に購入した人は危ない』(「週刊文春」<文藝春秋/10月30日号>)、『「貧困老後」の現実 持ち家が老後を破壊する』(「サンデー毎日」<毎日新聞社/11月30日号>)などだ。
「週刊文春」では、次のような実例を紹介している。
  Aさんは2階建ての建売住宅を1994年に購入し、3900万円借り入れて35年ローンを組んだ。返済は毎月12万円と年に2回のボーナス時に30万円。妻の月収も40万円あり、繰り上げ返済もしていたために、まさか住宅ローン破綻するとは思わなかったようだ。しかし定年を迎えた時、退職金は大幅に減額されて1000万円に届かず、再雇用の条件も悪くなった。妻が病気になったこともあり家計の収入が激減し、自宅をやむなく売却したが、600万円の借金が残った。
同誌において任意売却の専門家は、住宅ローン破綻する人が増えている実態を次のように語っている。 「破綻の相談は今年に入って増えており、昨年の倍、年間1000件に達する勢いです。破綻に陥る理由は、高額購入、退職金の減額、リストラ、病気、離婚……あらゆるものがあり、複合的でもあります。相談に来られた方に共通して言えるのは、ローンを組むときに破綻を想像した方は一人もいないということです」
また別の専門家は、今後も破綻は増えると警鐘を鳴らしている。
「購入者が破綻する時期は、平均して、購入後15〜20年です。ここ数年の破綻者は、地価がまだ高かった1995〜97年にフルローン(頭金なしの全額融資)で購入した人が目立ちます。この時期に購入して、これから定年を迎える人も多く、今後破綻は増えると思います」(「週刊文春」)
高値つかみしてしまった不動産に、当時の高金利でなかなか減らない住宅ローンの元金、そこに思わぬ退職金の減額が襲うわけだ。

引用元:2014年12月1日 Business Journal

最近耳にするようになってきた「老後破産」というフレーズ。誰もが薄々気づいていながら顔を背けてきた事柄がついに現実になってきたということでしょう。

小泉政権に端を発した大規模な構造改革により、既に形骸化しつつあった企業の終身雇用制は明確に終わりを告げました。ちまたには解雇の憂き目にあった派遣社員があふれかえり、年末には「年越し派遣村」なる新しい貧困層が世間の注目を集めました。

東証一部上場の百年企業であればいざ知らず、中小零細ではいまだに平然と解雇や賃下げを繰り返しています。悪質なところでは社員を自主退職に追込み、さらにはごねを繰り返して退職金すら渡さない企業も存在します。

「老後破産」はこのような悪質な中小企業の傾向がついにある程度の規模にまで拡大してきたことを意味しています。国が作っているモデル世帯は、夫婦と子ども2人、三千万円程度のマイホームを住宅ローンで購入し、3年から5年程度で車を買い換えるというもの。この夫婦が老後においても退職金と年金によって、平均寿命まで生きていけるというように試算されています。

その試算があまりにも食い違ってきたことがこの「老後破産」という現象なのです。給与は上がらず、その一方で強制的に退職金を減らされたり、再雇用の契約を反故にされたりするなど、現実に起こった問題がモデル世帯を直撃してしまったのです。

年金からしか収入のない高齢者層は、万一退職金が予想外に低くなれば、もはや住宅ローンの返済のあてがありません。苦労をして定年まで勤めたあげく、寒空の中、放り出されてしまうのは本当に気の毒なもの。

今後、この傾向はさらに強まってゆくことでしょう。いざというときを考え、なるべく早いうちに自分の将来を自分で守る算段を整えておくことも大切な時代になってきたのです。


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