依頼者からの借金体験記
自己破産への道
はじめに
バブル崩壊以来、長らく続いた不況時代も終わり、今は「いざなぎ景気」を超える戦後最長の景気拡大局面だという。しかし、それを実感している国民がどれだけいるだろうか。それどころか、全国信用情報センターが2006年に行った調査によると、5社以上の消費者金融などから借金をしている多重債務者は約229万人にも上るという。ちなみに、債務者総数は約1399万人、借入残高は14兆1965億円。このうち1社だけから借り入れている43%の人が今後、多重債務者になる可能性を考えると、「好景気」という実体を伴わない言葉に浮かれている場合ではない。事態は深刻だ。
今回、インタビューに応じてくれた吉田孝雄さん(38歳・仮名)は、2006年の春に小宮山司法書士事務所を訪れ、債務整理について相談。自己破産の申し立てを行い、同年秋に無事、免責決定を受けて約250万円の債務がなくなった自己破産経験者。「自己破産をしてみて分かったことはただ一つ。すべてを犠牲にしてまで借金に苦しむことが、いかにバカバカしいかということ。それを是非、みなさんに伝えたいと思っていた。こうして発言の場を与えてもらえたことにむしろ感謝している」と言う。彼がそこまでの心境に至ったプロセスを振り返ってもらいつつ、いまだ借金に苦しむ人たちに伝えたかったこととは何なのか訊いてみた。
(インタビュアー・神塩光一)