依頼者からの借金体験記
ある主婦の15年戦争
「平凡な毎日」という喜び
何もない平凡な毎日がこれほど幸せだとは思いませんでした。いつものことですが、今朝も夫と娘はほとんど何もしゃべらず、無愛想に学校と会社にでかけていきました。それぞれの背中を見送りながら、特別な1日が始まる喜びをかみしめています。
今日ですべての返済が終わります。ずっと先のことだと思っていたけれど、その日が来てみると案外、短かったとも思えます。借金のことを夫にも誰にも言えずに悩んでいたわたしは、当時、完全に自分を見失っていました。どうしてこんなにも借金の返済に追われることになってしまったのか、自分にはまったく分からなかった。パチンコなどのギャンブルにはまったわけでもなく、まとまったお金を借りて事業を始めたわけでもありません。ただ、夫とふたり普通に生活していたつもりでした。
今年、わたしは40歳になります。夫は2つ年上です。中学1年生になった娘はテニス部に入って、毎日遅くまでの練習をがんばっています。来週の日曜日には夫と2人で娘の試合を観にいくことになっています。このささやかな幸せがずっと続いていけば、ほかには何もいらない、心からそう思います。わたしの体験をお話しすることで、どなたかのお役にたてるならと思い筆をとりました。これが借金苦の始まりだといった、はっきりしたきっかけはよくわからないのですが、とりあえず、結婚してからの人生を順をおってお話していってみます。
25歳の時、大学の先輩だった2歳年上の夫と結婚しました。特に贅沢を好む2人ではなかったのですが、共働きだったので金銭面で窮屈な感じはなく、流行りの店で食事をし、帰りにはビデオを借りてきて、ワインを飲みながらゆっくり過ごすといった週末も少なくありませんでした。まだまだ恋人気分だったのだと思います。貯金もほとんどしていませんでした。そのころのわたしたちの収入は、会社員の夫は手取り月20 万円、ボーナスが年2ヶ月で、年収はおよそ320万円。わたしのほうも会社員でしたが、手取り月17万円で年収は200万円。ボーナスはありませんでした。家賃は都心からやや離れているので、広めの間取りのわりに安く、月65,000円です。日ごろから、夫は大きな買い物以外は現金で支払っていましたが、わたしのほうは、学生のときから慣れていたので、日常の買い物でもカード払いをすることが多かったように思います。